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深夜国アーカイブ

記録用その他です

第二回大阪てのひら怪談に落選したので作品を供養します。

ギャラリーの展示が終わりましたね。私は落ちました。でもちゃんと作ったものを公開することは大事なことだし、せめてこういった場所で供養しようかと。なろうとかカクヨムに落とすことも考えたけど、まぁ公開できれば何でもいいかなという次第です。(そんなおっぴろげてやってもな) (これ落選だからな) (というか公開していいのかな)

 

 

供養①【大阪人の姉が死んだ】

 姉が亡くなりました。姉は大阪人でしたので、芸能人の葬式でもないのに多くの弔問客、テレビと新聞社の記者、そして極道で式場がごった返して、たいへんな騒ぎになりました。

 大阪人は今ではもうかなり貴重な存在です。父も大阪人でしたが、同じく大阪人の義母と別れる時には、周りからたいそう噂されたそうです。私の母は普通の日本人でした。今にして思えば、父の転落人生は私の方の母との再婚がきっかけでした。間違いだったのかもしれません。

 ギャグセンの高い大阪人一人の骨から精製される「ナンデヤネン」は、百人分の抗鬱剤になり、人を休みなく三日三晩も働かせると言われます。そして多くの薬中と廃人を生み出しています。今ナンデヤネンの用途として有名なのは高齢者の尊厳死安楽死のそれです。ナンデヤネンは法律では認められていません。流通させているのは極道です。国は黙認しています。マスコミの人たちはそれを批難しているのです。

 父が弔問客に挨拶を読み上げます。家の外では絶対に使わなかった大阪弁です。姉の遺体を持っていかないで欲しい。涙声でそう訴えかけています。フラッシュが焚かれます。

 姉のことは嫌いじゃなかった。でも父は姉だけを可愛がった。

 ……ぼくとお前の血の中だけに孤独の遺伝子が流れとる……ぼくらはどうして生まれてきたのやろな……

 浴室から響いてくる声。

 あの日、父は地に臥した姉と血濡れの私を見て、その場に崩れ落ちました。私を殴ったりはしなかった。泣きじゃくるだけでした。

 姉の棺桶が極道の人たちに運ばれて、黒々とした人だかりの先へと消えて行く。

 今日で私の母が残した借金は全部なくなりました。

 明日から父と私だけの虚しい生活が始まります。

 

供養②【オオサカオバハンムシの巣】

 分かりました、順を追って話します。

 N駅から地下鉄に乗ったんです。いつもの通勤ルートでした。でもその日は違った。

 10人ほどいる乗客全員が私を見てるんです。《顔に何か着いてるのかな》と思いました。でも全員が血走った目をグッと見開いて、こちらを見ているんです。普通じゃなかった。

 それに皆どこかで見たような顔でした。体格や服装、髪型にまで既視感があって、押し並べて豹柄の太ったおばさんでした。

 伯母は関係ないと思います。でも伯母を思い出していたのも事実です。

 乗客の顔を見ていたら、強い吐き気に襲われました。だから顔を背けて、窓の外を流れる壁だけを見ていました。そしたら乗客たちが立ち上がって、ゆっくりと近づいて来るのが窓ガラスの反射で分かるんです。

 何人か突き飛ばしながら、私は隣の車両へと急ぎました。逃げようとしました。ちょっとの距離がやけに長く感じて、ほとんどパニックになって扉を強引に開けて、その先も見ずに飛び込みました。でもその先は大阪の家の台所だったんです。

 私はあの家にいたんです。

 庭にあったブランコがキイキイ鳴っていて、それで何となくあの家だと思いました。

 唐突に後ろから引き倒されました。何人かに体を抑え込まれて、咄嗟に《やめて!》と叫んだら、口の中に何か固い粒をたくさん押し込まれました。吐き出す度に何度も何度も。

 気持ち悪かった。ねばねばして。甘くて、頭がとろけそうで、景色が濁っていきました。

 下着を脱がされて、何か重たい物が私に覆いかぶさってきて、私を解体していく。痛みは感じませんでした。折りたたまれて……その後は分かりません、目覚めると病院でした。

 ……伯母はたしかに小児愛者でしたが、故人を悪く言いたくありません。

 もういいですか。娘を両親に預けてるんです。

 

供養③【ジョージ君と蛸】

 タコ社長の「蛸のワタも蛸焼きに入れてしまえ」の一存で、工場が新しく一個建った時は、俺も「そのワンマン経営ってどうなの?」と思ったけど、結果的にそれで破天荒のジョージ君にも再会できたわけだ。悪くない。

 破天荒のジョージというのは小学生時代の丈二君の二つ名だ。でも俺と丈二君は、5年生の時に向こうが埼玉から大阪に引っ越したきり疎遠になっていた。初めの数年は年賀状のやり取りなんかもあったけど、幼い友情の脆さを後に学んだ。

 だから寄せ場で丈二君を見つけた時は驚いたし、しょうもない成金に成り下がっていた自分にも気づかされて、世間が作った俺達の間の埋めがたい溝が切なかった。

 丈二君は「やるべきことがあるから日雇いでいる」と他の連中に漏らしていたらしいけど、一人だけ明らかに要領が悪かったし、他の連中から動かない左手を馬鹿にされていた。その話を聞いて「あちゃ~昔から不器用だったもんなぁ~」って俺は思ってた。思ってたけど。

 そのワタは普通のワタの5倍以上もあって、あの保健所をくぐり抜けてきた怪物だという噂だった。事実、日雇いを何人も飲み込んで穴だらけにしていた。こんなの創業以来だ。

 「だからそのワタはやめておけとぉ!」

 突如、丈二君が工場のトタン屋根を突き破って、荒れ狂う背中に流星のごとく墜落してきた。動かないはずの左手が意志を持ったかのように、それこそ蛸みたいにウネウネ動いて(印を結んでいるのか)、丈二君が「セイ!」と喝を入れると、ワタが「グォオ!」と鳴いて爆発した。瞬殺だ。血煙と肉の雨。唖然とする俺と日雇いたちを尻目に、ジョージ君は肉片の一つを摘まみ上げて一口でたいらげた。大喝采の工場にジョージ君が言い放つ!

「ワイの勝ちや!」

 俺は涙を流した!

 さすが破天荒だぜ!

 

 

友達に一番ウケたのが「ぜんぜん思いつかんけど3個出したいし!感覚だけで適当に書くか!」ってやっつけたジョージ君だったのは、なんというか、うーん...僕もジョージ君好きだけど......でもそういうのじゃないやんって感じ。ま、いっか。大阪のSUNABAギャラリーの展示は山下昇平さんの作品も他の作品も面白かったです。